皆さん、こんにちは!今回は、“INDECENT PROPOSAL(邦題:幸福の条件)”という映画より、たった1つのフレーズを取り上げ、お話をしてみますね。コラム予告にあるURLで映画のストーリーはご確認して頂いたと思いますけど、要は「お金に困ってる夫婦にロバート・レッドフォード扮する億万長者が、奥さんを1晩100万ドルで抱かせてくれないか」というオファーをする映画です。コラム予告のURLでの解説に、仮定法の細かいニュアンスもとても参考になりますが、それだけでは済まさないのがたねぞうの英語道です。
たねぞうがこの映画を見たのは、もう何年前になるのでしょうか?もちろん隣には当時お付き合いしていた、たねぞうのガールフレンドと一緒に観ました。Indecent proposal(直訳では「不埒な申し出」)のタイトル通り
、そのガールフレンドは何と不埒にも私に「私だったらお金払ってでも抱かれたいわぁ」などとヌカしておりました。まぁ、相手がロバート・レッドフォードですから、冗談にもなりますけどねぇ。
さて、この映画では、たねぞうの記憶では100万ドルのオファーを夫婦は受け入れたのですが、奥さんと大富豪の間に実際に肉体関係があったかどうかは、最後まではっきりとは判明しなかったようです。私も人間ですから、映画自体のストーリーにも考えさせられる点もありました。もし自分が貧困な夫の立場だったらどうするだろうか?とか・・・。ま、ストーリーはこの辺で切り上げて、この映画の中で、たねぞうの頭を直撃した、たった1つの英語表現があります。それは、100万ドルのオファーを受け入れて、その夜が過ぎて、夫婦の歯車が夫の嫉妬から狂い始めた時に、夫が妻に向かって怒鳴るように数回叫んだセリフ:
Was he good?(確か字幕では“よかったのか”だったような)・・・妻に「富豪とのSEXがよかったのか?」
このたった1つの中学1年生でも知っている3つの単語からなるセリフに大きなショックを受けました。なぜ、そのセリフだけ今でもしっかり、そのシーンも目に浮かぶように覚えているのかは、自分でもよくわからないのですが、Was he good?(よかったのか?)という1つのセリフから、goodという単語の深さを感じたのでしょうか・・・。good、辞書を引けば「よい」ですから、“Was he good?→彼はよかったのか?”で気にすることもなさそうですが、なんとなく、このgoodは、以来ずーっと心に引っかかっていたのです。それは、goodじゃなくてniceではだめなのかな?という素朴な疑問でもありました。Was he nice?と言っていたとしたら、どんなニュアンスの変化があるのだろうという疑問。なんとなく、niceでは変だよなぁ〜、でもどうして変になるのかが自分でもよくわからず、とりあえず数年が過ぎた訳です。こんな微妙なニュアンスについて思いをめぐらすには入院中(たねぞうは今、病室です)ぐらいしか暇がとれないので、今回思い切って取り上げることにした次第です(単にコラムのネタ切れという噂もあったりして)。
SEXのうまい、へたのgoodの用法について詳しく解説している文法書などあるはずもないので、ここは一応ネイティブのうまぞうと連絡を取って、聞いてみました。彼は今、まだアフガンゲリラと闘争中らしく、忙しく電話口の向こうで語っていましたが、goodとniceのこのケースに関するニュアンスの違いを教えてくれました。
まず、goodの用法ですが、このSEXに関するケース以外の用法で、ネイティブでも誤用はあるそうです。例えば手元にある辞書を引くと略式とは明記してありますが;
I feel good this morning.(今朝は体の調子[気分]がよい)
という例が出ています。が、In Defence of Good English(正しい英語を守るために)と銘打ったOxford American Dictionaryのgoodの注釈には;人の健康を述べるときにI feel good.は正しくなく、I feel well.とすべきとあります。この点はうまぞうも同様に指摘しておりました。ま、このあたりは、慣用で I feel good.はOKとしましょう。
さて、SEXでのgoodですが、以下の4つの例を比べてみるといかがでしょうか。
1) Was I good?
2) Was I nice?
3) Was it good?
4) Was it nice?
(以上4例ともSEXが終わり、タバコでも吸いながら落ち着いているシーンを想定)
この4つをSEXが終わった後に言ってみると、どんなニュアンスの違いがでてくるのでしょう。これを考えるために、もう1つ考慮すべきことがあります。それは男性と女性のSEXに対する考え方です。得てして男という動物は、自分のSEXテクニックが充分相手を喜ばしたかどうかを気にしがちです。ところが、女性はSEXテクニックそのものよりも、相手から抱かれているという全体的フィーリングを大切にするのではないでしょうか?(たねぞうとうまぞうは男ですから、女性の感覚を正確につかむことはできませんし、入院中のたねぞうは、これを看護婦さんに聞くと強制退院させられそうです。)さて、うまぞうが語るには、SEXについてのgoodは、テクニックについて重点を置き、niceは男性とSEXした全体的フィーリングを主眼に置いているとのことでした。ですからSEXが終わった後で;
Was I good?(→オレのテクはどうだった?)と聞くとちょっとホストのお兄さんのセリフになりそうです。ただ、主語をitにすると、Was it good?となり、これはitがSEX全体を表しており、許容範囲か?Was it nice?とすると、女性に対する聞き方としては、もっとマイルドになり適切な表現となります。ところが、SEX後、Was I nice?と聞くと、「私はいい人だった?」というトンチンカンな意味になってしまいます。
女性同士でSEXについて話をしている場面を想定してみましょう。He wasn't good but he was nice.(へたくそだったけど、いい人だったよ。)という文章も成り立つわけです。男性は、女性の思っている以上にSEXテクニックにこだわる馬鹿な生物ですが、この映画の中で、夫が;
Was he good?(ヤツはうまかったのか?)
と、聞いた単純な質問もgoodでないといけない理由がようやく見えてきました。嫉妬に狂った夫が、「ヤツとのSEXはよかったのか!」とリピートする場面が、もしniceが使われていれば「ヤツはいい人だったのか!」と、それこそこんなセリフを言う夫がいればその夫こそ、いい人というか平和な人になっちゃいますね。
しかし、病院の公衆電話から(ボックスタイプでないやつ)、うまぞうと約10〜15分、この件について議論し、何回SEXと言ったことでしょう。英語で話していたとはいえ、周りに人も居たので、ちょっと恥ずかしいたねぞうでした。
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