教えてたねぞうコーナーを再オープンしてから、たくさんのご質問を頂きます。通常、1日で返信しているのですが、仕事と花見に追われ、未回答質問がたまりまくっております。この場を借りてお詫び申し上げます。すんません。「コラム書くひまがあったら、質問に答えんかい!」と怒られるかもしれませんが、ちょっとだけ、書きたくなったので、ご紹介します。
いきなりですが、荻村伊知郎さんという方、ご存知ですか?ピンポン外交で北朝鮮との外交に一役買った人といえば、思い出す皆さんもいるかもしれません。既に故人です。彼は、日本大学に入学してから、卓球を始め、世界チャンピオンまで上り詰めた方です。卓球日本の黄金時代を築いた立役者の一人だったと記憶しております。彼の逸話をちょっとご紹介したいと思います(うろ覚えなので、正確ではありません。たねぞうの想像もは入っておりますのでご了承ください)。
● ある日彼は、後輩を捕まえ、練習試合を始めました。後輩ですから、ハンディ付です。卓球は21ポイント先取した方が勝ちになるルールです。荻村氏がその後輩に与えたハンディはなんと20ポイント、つまり1ポイントでも後輩が取得してしまうと、荻村氏の負けになってしまうのです。これだけでもすごいのですが、さらに荻村氏は右利きなのですが、左手でゲームをやろうというではありませんか!結果は、荻村氏が、1ポイントも落とすことなく勝ちました。荻村氏はこの経験から、下記のような事を語ったそうです。「ピンポン球に対し、どの角度で、どのスピードで、どのぐらいの強さで、打球すれば、そのピンポン球が、どのように返球されるのか論理的に完璧に理解しているからこそ、左でゲームをやろうが右でやろうが関係はない。」
これは、荻村氏だからこそできた芸当であるとはいえるものの、英語で会話するときに文法が頭にチラッと浮かび悩み、なかなか言いたい事が言えない方には、グッとくるコメントかもしれません。昨年、ベストセラーになった本に「バカの壁、養老 孟司さん著」があります。バカの壁のなかに、脳のお話がでてきます。イチロー選手など、特殊な能力を持つ選手は、脳のシナプスを伝わる情報が早いのではなく、とある特殊なワープ経路を持っているのではないかと、書かれております。情報が脳のシナプスを伝わる速度は、人間は皆同じだそうです。ですから、ピッチャーが球を投げてから、どのようなバッティングをすればいいか判断するスピードが異常に早いのは、特殊な回路が脳にあるのでは?と推測されているわけです。卓球の荻村氏も、そうだったのかもしれません。
世の中、右脳じゃとか、イメージ脳だとか騒がれております。英会話スクールを見学にいくと、だいたい右脳でなんちゃらとよく説明担当員の方から話を聞きます。ごもっともなことで、果たして言語習得の過程で、右脳の果たす役割は大切だと、思います。が、英会話を身につけたいという初心者のスクール見学者にとっては、この手の話しは、少し時期尚早かもしれません。荻村氏の理論を英文法におとしこんで考えると、英文法を理屈として完璧に理解すれば、脳が即座に反応さえしてくれれば(考える時間が一瞬)いいたいことを文法を脳にきれいにまとめてアウトプットできるかもしれません。ただ、これはあくまで「理屈」であって、そのような段階にある人は、その文法事項が考えなくてもでてくるような状態(この状態が、英語脳とか右脳うんちゃら)にあるのでしょう。荻村氏の場合も、おそらく、左手でも右手と変わらない動きができる回路が既に脳に出来上がっていたから、勝つ事ができたのでしょう。子供が自然に母国語を覚えるように英語も・・・なんて、もう聞き飽きたセリフです。大人にとって、子供が自然に母国語を覚えたように英語もなんて、たねぞうは不可能だと思っております。これは、以前コラムでどこかに書いたような気がしますので省略しますが、大人には大人なりの習得の方法があるとは思っており、上記の荻村氏の逸話には、何かそのヒントが隠されているような気がします。
もちろん、皆さんに、今日から文法書にかぶりつきましょうなんていう気は毛頭ありませんけれど、それが必要な段階の人は、そうしなければならないのかもしれませんね。すこし、抽象的で言っている意味がよく判らんと怒られそうですが、書いている本人もよく判っていないのでご了承下さい。
おしまい。
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